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  • 開発者が語るおすすめ活用法第3回:一人ひとりの、使い方

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    前回までは、教育現場のeboardでの使い方を中心に紹介してきましたが、今回は、一人ひとりの子、特にご家庭での使い方についてお話します。Twitterに上がっている、実際に使ってくださっている方の声を紹介しながら、進めさせてください。

    不登校、教室に入りづらい子に

    まず、eboardを使って頂く中でも年々増えているのが、不登校の子です。なんらかの理由で、学校や授業、学校生活になじめない。けれど、学びたいという声をたくさんもらいます。コロナ以降、GIGAスクール構想やオンライン授業の影響もあり、不登校の利用者はさらに増えました。

     

    不登校の子ども達からは、「映像授業に先生の顔が出ないので、圧迫感がなくて見やすい」と言ってもらうこともあります。学校やその他の学習経験の中で、人と接すること自体に抵抗感を持っている子もいます。話し方も、先生が教えるというよりは「隣で勉強の内容を話してくれる」くらいのトーンでやっているので、そこが心理的に受け入れやすいという声も、よく頂きます。

    障害や認知特性に応じて

    こちらのお子さんは、聴覚認知が弱いとのこと。「物理的には聞こえてはいるけど、情報として処理するのが難しい」というケースですね。前回お話しした通り、誰しも視覚優位・聴覚優位という特性はあります。聴きとりでの学習が難しい子は、学校の授業はもちろんのこと、視覚情報が多い映像授業でも、難しいことがありますそういう子にとって、やさしい字幕がついていることで、映像授業がとても使いやすくなります。

     

    やさしい字幕の活用としては、ろう・難聴の子はもちろんですが、聴覚過敏の子が映像授業の音声を全て切って、字幕だけで学習をしていることもあるようです。感覚過敏を訴える子が増えているように思いますが、そうした子にとっては、教室や集団の中だと刺激が多いということもあり、個別にICTだと学習ができるという事例をよくうかがいます。

     

    また、eboardに関わらず、読み書きの困難がある子がデジタルだと学習しやすくなるケースもあります。頭では理解できているけど、書くことがうまくできないために「できない」と思ってしまっている、思われてしまっていることがあります。読みの困難も、自分一人だと読めないけど、誰かに読んでもらったら理解できる。

     

    こういう場合に、デジタルで選択式の問題であれば回答できたり、記述でもタイピングや音声で入力できるので、学習を進められるようになります。読みに対しては、音声読み上げが使えます。教材として大人は気にしないくらいの違いでも、「他の通信教材だとできない」ことが、eboardだとできて「楽しい」と言ってくれるのは、私たちも本当に嬉しいです。

    大人の学び直し

    実は、たくさんの大人の方が、eboardを使ってくれています。特に多いのは、算数や数学の学び直しなんですが、理科や社会もeboardの映像がいわゆる「受験勉強」という形になっていないこともあって、いろんな使い方をしてくださっています。

     

    いつもほっこりしてしまうのが、おじいちゃんやおばあちゃんがお孫さんと一緒に勉強するために、eboardで先に勉強しておくというケース。声を頂く範囲だけでも、結構そういう使い方をしてくれているご家庭があるようです。

     

    もちろん、様々な意味で恵まれたご家庭なのかもしれませんが、支援者の方がeboardで学ぶというのは、学生ボランティアが確保しづらい子ども食堂や地域の学習支援でも、よくお話をうかがいます。

    塾には行けない。けど学びたい。

    経済的な理由でしょうか。塾に行くのが難しいご家庭のようですが、eboardのおかげで学ぶことができているという声。まさに、eboardがNPO法人として活動し、無償で学習環境を届けているのも、こうしたご家庭、子ども達に届けていくためなので、一番嬉しい声ですね。

     

    もちろん、保護者の方がeboardを見つけてくれて、お子さんに紹介してくれるケースは多くはないので、学校や他の団体さんを通じて、学習環境を届けていかなければなりません。一方で、コロナの影響もあり、オンラインだからこそ、学校でもICTが進んだからこそ繋がれる家庭が増えてきているなとも感じています。

    おわりに

    3回にわたって、eboardの使い方、代表である私の考えをお話しさせていただきました。今回様々な声をご紹介させていただきましたが、eboardを使ってくださる中には、eboardを「たまに使う」という子や「あると役に立つ」というレベルの子もいれば、eboardがなければ学ぶことができなかった、学習や生活が変わったというような子ども達もいます。

     

    私は、eboardが誰にとってもベストな教材である必要はないと思っていますし、そうしたものをつくっていく気はありません。それはNPOでやるべきことではないですし、民間企業の教材でも素晴らしいものがたくさんあります。

     

    「学習に困難を抱えている子が学びやすい」教材に、「無償でアクセスできる」こと、に大きな意義があると考えています。そこを団体としてやり抜き、インターネット上に「学びのインフラ」を整えることが、私たちNPO法人eboardの使命です。

     

    ICT教材eboard及びNPO法人eboardの活動は、多くの方の寄付によって支えられています。活動への応援のほどよろしくお願いします。

     

    連載「開発者が語るおすすめ活用法」目次

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