


2025年11月7日(金)、東京商工会議所 Hall & Conference Roomで開催された認定NPOカンファレンス「ignite!」において、代表理事・中村孝一がピッチコンテスト「ignite! PITCH 2025」に登壇しました。当日は多くのご関心をお寄せいただき、誠にありがとうございました。
本記事では、代表・中村がピッチに込めた想いのすべてをお伝えするべく、当日のプレゼンテーション全文を掲載いたします。

NPO法人eboard 代表理事
中村 孝一
今日のイベントは、”ignite”。日本語では「火をつける」という意味です。
今日は、私に火をつけてくれた活動の原点から、話をさせてください。

大学に入るとすぐ、私は学習塾で働きだしました。
思いがけず、いろんな子に出会いました。
学校の授業から何年も遅れている子、不登校で塾だけで勉強している子、今思うと学習障害だろうなという子もいました。
それでも、できなかったことができるようになる。その伴走ができるのは、とてもやりがいのある仕事でした。

大学を出た後は、コンサルティング会社のアクセンチュアに入社。
しかし、どうしても現場での経験が忘れられなかった私は、1年ほどで退職。現場で教えるのではなく、少し変わった取り組みを始めました。
それは、動画授業を撮ること。

勉強がわからなかった時、新しいことを学びたいとき、いつでもどこでも見て学ぶことができる。そんな動画があれば、と考えました。
動画を作っては、教えている生徒に試しに使ってもらう。
法人化までの約2年間、撮り続けた動画は、1000本以上に上りました。
すごいですよね。よく言われるんです笑。
けれど実際には、実家に帰り、貯金も底をつき、「こんなこと、いつまで続けるんだろう」と焦りと不安しかない日々だったんです。

ところが、2013年の春、1つの転機が訪れます。
人口6,000人ほどの小さな町、島根県吉賀町。週末の補習に、「ICT教材eboard」を使いたいという問い合わせでした。
その頃には、自分でeラーニング・システムも作るようになっていたんです。それを持って、毎週末、片道6時間かけて、吉賀町に通う日々が続きました。

前の週に上がった現場での課題を解決するため、機能や教材を追加して、教室に持っていく。そんな試行錯誤を毎回積み重ねていきました。

そうして、最初の2ヶ月が過ぎた頃。教室を後ろから眺めると、ふとあることに気がつきました。
受験を控えた中学3年生が、ある子は予習を、またある子は小学校の算数からやり直しをと、一人ひとりが、自分の力で、自分のペースで学んでいる。

「これは本当に、大きな可能性があるんじゃないか」
私の中に、1つの火が灯った瞬間でした。
この年、「学びをあきらめない社会を実現する」というミッションを掲げ、NPO法人を設立。
インターネット上に、無料で学べる場所をつくる、という活動を正式にスタートしました。

その後、eboardは、時間をかけて周りの自治体に広がっていきました。
こちらは、吉賀町の隣町、益田市の澤江さんと谷上さん。
公民館での取り組みは、子ども達が学び、育つフィールドとして、学校でも塾でもない「地域」があることを教えてくれました。

取り組みは、都市部にも広がりました。横浜市のNPO法人アーモンドコミュニティネットワークの水谷先生。
困窮する家庭に丁寧に寄り添う、まさに「草の根」で活動されています。

ユーザーの年齢にも、広がりが出てきました。
京都府立清明高校の山下先生。
定時制高校での取り組みは、人はいつでも自らの力でやり直していけるということを、生徒たちから教えられました。

こうした現場の人たちは、私たちの「学びをあきらめない」という言葉をとても大切に、一緒になって背負ってくれたんです。
けれど、事業としては赤字続き。
動画やタブレットを使って学ぶことは、まだ一部に限られたものでした。
しかし、そんな中、再び大きな転機が訪れます。
2020年、新型コロナの世界的な感染拡大。
eboardのユーザー数は急増し、一斉休校中には、全国100万人の学びを支えました。

同時に、ユーザーの拡大は、利用者の多様化をもたらしました。

発達障害から「学びづらさ」を抱えた子、ろう・難聴の子、そして、外国ルーツの子。
実は、共通する学びのハードルがあったんです。
それは、「ことば」の難しさでした。

まずは、ろう・難聴の子が利用できるよう、動画に字幕をつける。
そこからさらに、字幕の言葉や文章を、人の手でわかりやすく編集することで、多様な子どもたちにアプローチできることがわかってきました。

なんとか、この「やさしい字幕」を実現したい。
コロナ禍、在宅ボランティアの募集を開始。
しかし、必要な人数は1,000人以上。
本当に実現できるんだろうか。
そんな不安は、手を挙げてくれた人たちの声が、消し去ってくれました。

「中学生の時にeboardに助けてもらった。今度は自分が力になりたい」
「聴覚障害の娘が、将来使える教材を作りたい」
「いつも使わせてもらっているeboard。教室でグループを作って取り組みました」

最終的には、19の企業・団体、1,000名以上の方の協力で、約2,000本すべての動画に「やさしい字幕」をつけることができ、日本の映像教材で唯一、字幕による学習保障を実現しました。

2022年には、この取り組みを評価いただき、ジャパンSDGsアワードを受賞することができました。
それからも、eboardは多くの寄付やボランティアに支えられ、今では、年間で200万人以上に学びを届けられるようになりました。

それでは、実際に使っている子どもたちの声、聞いてみてください。
「学校の授業で、言われてもわからなかったところを、eboardで家でやるときに見たりするから、それのおかげで、改めてそういうことがというのが分かる。」
「分からないところはもう一回予習とか復習したりしています。動画とか見てて、けっこう点数も伸びたりしました。」
「授業でわからないまま進められてしまうことが多かったので、そのままにしてしまって困ることがたくさんありました。でもeboardなら、自分のペースで勉強を進められます。」
2030年、現在のペースでいけば、不登校は10人に1人。
こどもの貧困、外国ルーツの子、発達障害、今の教室には多様な子が在籍しています。

それを、世界で一番忙しい日本の先生が、地域の人が、NPOが支えています。
そんな状況にあって、インターネット上の、安心して無料で学べる場所は、これまで以上に、この国に必要なものだと、私たちは信じています。

次は、今日ここにきた、あなたの番です。
eboardを使ってもらう、紹介する、ボランティアで参加する、寄付で応援する。
どんな形でもかまいません。
あなたの参加が、まだ見ぬ子どもたちの学びに、灯をともすんです。

「学びをあきらめない社会」、共に実現しましょう。
ありがとうございました。
2025年11月7日
NPO法人eboard 代表理事 中村孝一
▼実際のピッチ動画を公開しています。ぜひご覧ください。
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