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  • メンバー対談:eboardのバリュー(大切にしたいこと)策定と取り組み

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    NPO法人eboardは、2023年に設立から10周年を迎えました。実はこの年、ミッションである「学びをあきらめない社会」を目指すための「次の10年」の在り方として、私たちは「どういった活動を行うか」と同時に「どういった組織であるか」が大切になると考えました。
    そこで、約1年の期間をかけて、eboardに所属する全てのメンバーが関わり、eboardが組織として大切にしたいこと(バリュー)を策定。2025年度からは、このバリューに基づいた組織の中での取り組みを行っています。なぜ、この取り組みが大切なのか、それが何を生むのか。メンバーによる対談形式で、皆さんにお伝えさせてください。

    ※この記事は、2025年度活動報告書からの抜粋です。

    eboardのバリュー

    Learn to Change, Change to Learn.

    学ぼう、変わろう、変えよう。

    学びとは、自分自身が変わっていくこと。
    変わるのは、誰だって怖い。変わらなくたっていいのかもしれない。
    けれど、今の現実に「おかしい」と思うことがあるのなら、

    その現実を、変えていける自分になるために。
    まず、私たちが学ぼう、変わろう、そして、変えていこう。

    Listen to the Voiceless.

    声なき声を聴く。

    僕は、私は「みんな」とは、どこか違う。
    だから、この声は誰にも届かない。わかってもらえない。

    「みんな」の中に自分はいない。
    社会の原理は、お金の原理は「みんな」の声を聴いている。
    ならば、私たちは「声なき声」を聴こう。
    たとえ、今は力になれなくとも。聴くことは「あなた」を認めることだから。

    Power to the People.

    人に力を。

    社会を変えるのは、制度や技術かもしれない。
    しかし、人を変えるのは、取り残された人を変えるのは、その人に寄り添う人の力だ。

    私たちは、学びを、プロダクトを「人」に届けよう。
    「学びをあきらめない」というこの思いを、飽きるくらいに伝えよう。

    • 熊谷 一亮

      熊谷 一亮:

      eboard立ち上げの頃からのメンバー。長年のボランティアと教員経験を経て、2019年より正職員。
      御子柴 優子

      御子柴 優子:

      2016年よりパートタイム職員。2025年より法人理事。プライベートでは障害のある子の親の会の立ち上げに関わる。
      杉山 紀子

      杉山 紀子:

      2020年入職。コロナ禍の字幕ボランティアをきっかけに参画。
      今 早紀子

      今 早紀子(インタビュワー):

      広報チームスタッフ。名前は「こん」と読みます。

    歓迎と戸惑い、バリュー策定後の温度差

    :バリューが最初に発表されたときの、率直な受け止め方から教えていただけますか?

    杉山: 正直に言うと、私は最初全っ然ピンときていませんでした(笑)。パートタイムの私たちも一緒になって作るって聞いて「えぇっ!?そうなの?」って感じで。これまでの仕事ではバリューなんてなかったし、限られた業務時間の中で何をするんだろうって。最初は懐疑的でしたね。

    御子柴:昔から団体のTシャツになっていた“Learn to Change, Change to Learn”は、私の中でも定着していたんです。でも、新しく出てきたものは「おお? かっこいいじゃん」と思いつつ、すぐに腑に落ちる感じではなかったですね。

    熊谷: そうだったんですね。私は当時育休中だったんですが、実は言葉が決まったのを見てめちゃくちゃ興奮していたんです(笑)。「自分もその言葉を紡ぐ場にいたかった!」って悔しがるくらいで。特に “Listen to the Voiceless”は、「やさしい字幕」などを公開して、障害のある子や外国ルーツの子たちに向き合い始めたタイミングだった。だから「これ以上いい言葉はない」って、すごくポジティブに捉えていました。

    疑うことから始まった、本当の浸透

    :取り組みを重ねる中で、バリューに対する印象が変わるきっかけはあったのでしょうか?

    御子柴: 私の中で大きかったのは、メンバーに向けて体験を話してほしいという依頼が来た時でした。うちの上の子には重度の視覚障害と発達障害があって、今は高校生ですが、小さい頃は目も見えないし歩けない、喋れないかもしれないという状態だったんです。その子育ての話をしてほしいと。ただ、依頼の段階で少しモヤモヤしたんです。「ボイスレスな人の声を聞きたい」という名目で依頼すること自体が、相手を「あなたってボイスレス(声が小さい)ですね」と定義し、ジャッジすることになってしまうんじゃないかって。インタビューする側とされる側の非対称性というか、危なさを感じて、それが気になると正直に伝えました。

    :提示されたバリューそのものへの違和感ですね。当日はどんなお話をされたんですか?

    熊谷: その御子柴さんのお話は、聞いていて本当に「そうだよな」と思いましたし、今でもすごく心に残っています。 私たちは普段、障害や困りごとのある子どもたちのために活動しているつもりでも、実はその状況をちゃんと見ていなかったんだなと気づかされました。「多分こうだろうから、こうしたらいい」と決めつける前に、まず「ちゃんと聞こう」と思えるようになった。そんな、人としてすごく基本的な関わり方の土台が変わったなと感じています。

    「弱さの開示」がエンパワメントに

    杉山:私はね、あるひとつの会議がきっかけで、バリューの取り組みがすごく良くなったなと感じたんです。実は、私はこうやって自分のプライベートなことや、本音を話すのがすごく嫌いなタイプなんです。仕事は仕事だし、なんでそこまで話さなきゃいけないの?って思う気持ちもわかるから。だけど、日頃の仕事とは違うシャッフルされたチームで回を重ねていくうちに「あ、何でかわからないけど、この人たちのところだったら話しても、結構受け止めてくれる感じがするな」って思えたんですよね。

    :心理的な安全性を「じわ〜っと」感じられたんですね。

    杉山:そう。その回の最後に「みんなの少し言えずにいること(voiceless)を話しましょう」という時間があって、私も自分の子育ての中での試行錯誤を話したんです。そしたら、他のメンバーも次々と結構重たい話をされて。その場がすごく救いになったのは、みんなの「重さ」のバランスがちょうど合っていたからだと思うんです。「ああ、話してよかったな」って、そうやって他人に話してよかったと思えたのは、私のこれまでの人生でも初めてのことだったかもしれません。

    :画面越しでしか会ったことがないフルリモートの組織なのに、その安心感があるのはすごいことですよね。“Voiceless”から“Empowerment”にという感じで、2つのバリューの繋がりを感じます。

    熊谷: 本当にそうですね。バリューの “Power to the People” って言葉の響きだけだとどうしても「相手にパワーを与えてあげる」という上から目線に聞こえてしまいがちで、最初はメンバー間でも少ししっくりきていない部分があったんです。 だけど、自分の弱さや格闘している部分を場に出し、考える時間を持つこと。それ自体が、実はお互いの力になっているんだなと気づかされました。

    小さな雛が、想いを未来へ引き継ぐために

    御子柴: 業務上の変化でいうと、利用者の方とのやり取りの中で、ちっちゃな不具合報告やイレギュラーな要望がぽろっと来ることがありますよね。多くの人は忙しかったり面倒だったりでスルーしてしまうところを「わざわざeboardに送ってきてくれた」「その声をちゃんと拾おう」という意識が、チームを超えて強くなったと感じます。

    熊谷: 会議でも、バリューの視点が自然と出るようになってきていますよね 。

    御子柴: そうですね。例えば今のeboardの読み上げ機能って、全盲の子にとってはまだ使いづらい部分があるんです。でも最近の会議では「全盲の子はどうやって勉強するんだろう?」という視点が当たり前に出るようになっている。 これまでは技術面やコスト面で「到底無理でしょう」とあきらめていたことも、「こういうニーズのある子がいるなら、こんなことができるのでは」って、みんなが言いやすい文化が積み上がってきているなと感じます。

    杉山: その文化って、これから新しく入ってくる人たちにも、ちゃんと引き継がれていきますよね。実は私、こないだ採用面談に立ち会わせてもらったんです。すごく立派な経験やスキルを持った方たちがたくさん来てくださっていて。その時に、eboardの歴史をふと考えたんですよ。 最初は、中村さんたち初期メンバーが生み出した、本当に小さな「雛」をみんなで大切にかわいがって育てて。そこへ私や御子柴さんのような近所のお母さんたちが「そんなにいいものなら手伝うよ?」って集まってきて。そうこうするうちに、よそでバリバリ仕事をされていた方たちが「ここで働きたい」と集まる大きな組織に成長したんだなって。 それはすごく嬉しいことなんだけど、同時に大切に育ててきた初期の熱い想いや気持ちが、大きくなってもちゃんと引き継がれていくのかなって、一抹の寂しさや不安もよぎったんです。

    :組織が大きくなるからこその、切ない葛藤ですね。

    杉山:でもね、面談をしながら思ったんです。「私たちにはバリューがあるじゃないか」って。これからどんなに立派な人が入ってきても、このバリューを一緒に取り組むことで、私たちが大事にしてきた想いや帰るべき場所がちゃんと伝わっていく。 そのとき、私の中で点と点が繋がって「あぁ! バリューを作ったのって、そういうことだったのか」って、心からその存在意義を実感できた気がしました。これからどれだけ組織が大きくなっていったとしても「eboardの杉山です」って、どこに行っても恥ずかしくなく、胸を張って名乗れると思うんです。それは、このブレないバリューの軸がみんなの中にあるからだと思いますね。

    熊谷: バリューを定めたからといって、明日から組織が劇的に変わるわけではありません。だけど、お互いに「大切にしたい価値観」をこうしてテーブルの真ん中に置いて、時間をかけて泥臭く話し合い、現在進行形で変化し続けていること。まさに “Learn to Change, Change to Learn” なんですよね。それ自体が、eboardという組織の、何よりの強さであり価値なんだなと、今改めて感じています。

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