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  • 急増する不登校24万人 届けたい一人ひとりの声

    10月27日に文部科学省から発表された不登校の小中学生の数は、過去30年間で最大の4万8,813人増となり、過去最多の24万4,940人に上りました。この記事では、調査の内容を追いながら、数字だけでは見えない不登校の子ども達の置かれた状況や悩みを、NPO法人eboardに寄せられた声から、お伝えしていきたいと思います。

    急増する不登校とそのワケ

    10月27日に文部科学省から発表された「令和三年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、不登校児童・生徒の数は、過去30年間で最大の4万8,813人増となり、過去最多の24万4,940人に上りました。下図グラフの通り、この数年で急増しており、そのペースは 小学生が 4年で約2.3倍、中学生が4年で約1.5倍。小学生の増加が目立ちますが、今回の調査では、数年横ばいもしくは微増となっていた 中2や中3での急増が見られました。



    それでは、どのような理由から子ども達は、不登校に至るのでしょうか。回答で 約半数を占めるのが「無気力、不安」。これまでも最も回答が多い項目でしたが、昨年の9万1,886人から、12万1,796に大きく増加しました。これには、長引く新型コロナの感染拡大による休校や、社会的不安が影響しているのかもしれません。家族に係る要因(家庭の生活環境の急激な変化、親子関係をめぐる問題、家庭内の不和)や「生活リズムの乱れ・あそび・非行」は いずれも増加しており、こちらもコロナの影響で、家にいる時間が増えたこととの関係が うかがえます。


    eboardにも、コロナ禍で不登校に至った声を たくさんいただきました。

    コロナ以後、小学校を欠席しがちになってしまいました。その後、中学校進学時に体調を崩してしまい、入学式を含め、半月ほど登校できませんでした。数日は登校できたものの、クラスに馴染めず、不登校状態になりました。

    酸素吸入をしている兄弟がいるため、登校自粛しています。小学校はオンライン授業はむずかしいようで、教材などは自費で負担しているため、とても経済的に負担になっています。



    子ども達から見た「学校への行きづらさ」

    学校・教育委員会を対象とした本調査では、不登校の理由について、約半数が「無気力、不安」と回答しています。一方で、子どもおよび保護者を対象とした「令和二年度 不登校児童生徒の実態調査」では、その他のさまざまな要因も見えてきます。「最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」について、「先生のこと」が小学生では 29.7%で最多、中学生でも 27.5%と3番目に多くなっています

    eboardに寄せられたメッセージをご紹介します。

    現在中学2年生ですが、1年生の秋から学校に通えなくなりました。最初は過敏性腸症候群を発症し、その治療の過程で先生からの暴言があったことがわかりました。当時も今もそのことについては本人は全く話せず、学校に関わる事柄には部屋にこもったり、怒ったり泣いたりと情緒的に反応します。学校の先生とのトラブルでしたので、大人の人と関わる塾なども難しい状況です。大人全体への不審感や中学生という年齢的なものもあり、親とのコミュニケーションも(学習のことに関しては特に)できていません。

    中学校での人権侵害的な経験により、学校に行こうとすると身体症状をきたすようになりました。教師の、提出物が出ない生徒の名前を貼りだす、大声でみんなの前で叱責するなど、納得がいかないことが多く、学校への不信感、教育制度への不満がふくれ上がっていきました。。学校へ再三訴えたが、学校は変わらず、学校に行かない選択をしました。

    同じく人間関係では、「友達のこと」も、特に中学生では多くなっています。

    長期間、同じクラスの子から、いじめ(嫌がらせや脅し、暴力)を受け、小3の3学期から、不登校状態になりました。小4の7月に医療機関を受診しPTSDの診断を受けています。登校できたとしても、フラッシュバックが起きるなど、クラスで過ごすことができないため、登校できた時は、支援級で過ごしています。そのため、学習が進まず、同じ年の友達と同じ学習が出来ていないこと、遅れていることに本人が不安を抱いている状態です。

    中学生で一番多いのは、「身体の不調」。これは、小学生でも2番目に多くなっています。

    起立性調節障害と診断されました。現在は午後の授業を頑張れば受けれるかな?という状態です。一年前くらいから保健室に行く回数が少しづつ増えていき、今年になってから毎日1時間は授業を受けずに保健室で過ごすことになり、ついには学校に自力で歩いて登校できなくなりました。一時期は一緒に歩いて行ったりしてたのですが、途中で気分が悪くなり引き返した日から限界を感じたようで、午後からしか授業を受けに行けなくなりました

    その他、学校への調査と同じく、「生活リズムの乱れ」や「勉強がわからない」ことから、不登校に至ることもあります。「eboardを使いたい理由」として、「不登校」と回答した子のうち、71%(1058回答中754件)が「経済的な事情」「発達障害など」「その他」の別の理由もあわせて回答しています。不登校になる理由は、本当にさまざまで、いくつかの要因が重なることも少なくありません。

    現在、生活保護を受けています。小学校5年生の娘が発達障がいグレーゾーンに近い数値で、毎朝起きることができず、週のうちほとんどを登校できない状態です。5年生ですがまだかけ算も微妙な感じで、学習からかなり遅れています。通信教育で何かよい物をと思いましたが、料金的に厳しいのと、ほとんどがクレジットカード必須なので、受講できない状況です。

    4年生の頃より「頭の中で文章はおもいつくんだけど、上手くまとめられず文章となると字がかけない。学校の騒音が嫌だ。コミュニケーションのとり方がわからない」と言い出し、学校でスクールカウンセラーよりカウンセリングを受けていました。6年生になり4月欠席が増え、4月末より不登校になりました。学校には週一回ほどカウンセリングに1時間は行きますが、教室には一度も上がれていません。

    小学校低学年から発達特性による困り感があり、環境調整をお願いするが、合理的配慮が受けられず、先生からも理解されず、学校が安心安全と思える居場所ではなくなった。学校の先生、学校、勉強がひとまとめで嫌いになり、学校へ通うことが苦痛になり、不登校になりました。



    不登校の子ども達へのサポートは?

    不登校になった / 不登校を選択した子ども達は、学校に行けない / 行かない中、どのようにサポートを受けているのでしょうか。調査では、不登校の小中学生のうち、「相談・指導等を受けた人数」と受けた施設の内訳が、公開されています。

    相談・指導等を受けた割合は、例年7割ほどで、裏を返すと 約3割の子が「相談・指導等を受けていない」状態 にあります。今年度の調査結果では、不登校の数が急増する中で、相談・指導等を受けた「人数」も大きく増えたものの、割合としては低下。36.3%の子が「相談・指導等を受けていない」という結果になりました。

    課題のある数字ではあるものの、「学校内で相談・指導等を受けた」数は、2万人近く増加しており、コロナ禍の慌ただしい中で、先生やスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの方々など、多くの方が取り組みを進められた様子がうかがえます。同じく、教育委員会が設置する「教育支援センター」やフリースクールなどの「民間団体、民間施設」で相談・指導等を受けた子も、例年になく増加しました。

    それでは、どのようなケースで、「相談・指導等を受けられない」ことがあるのでしょうか。学校に限らず、大人がいる場所や集団の中で過ごすのが難しい子もいます。地方では、教育支援センターの設置が進まないケース、フリースクールなどの民間施設がないことも。「相談・指導等を受けられない」理由も、不登校に至る理由と同じく、さまざまです。

    4年生から学校に行きたがらなくなり、現在は完全不登校です。フリースクールなども見学しましたが、本人に合わず、自宅で学習することになりました。HSC(Highly Sensitive Child, 非常に敏感な子)の傾向があります。本人は勉強は嫌いではありませんが、親ではうまく教えることができず、助けが必要です。

    子どもが2人とも 不登校で、学習の遅れを心配しています。学校にも塾にも行きたくないといい、ずっと平日も休日も家で過ごしています。勉強はしていません。シングルマザーで収入も少ないので、フリースクールや学習塾などのお金の余裕はありません



    「1人1台」を活用した不登校支援

    そんな中注目されているのが、GIGAスクール構想で普及した1人1台環境を活用した不登校支援です。コロナ前は、制度活用がまったくと言っていいほど進んでいなかった「家庭でのICTを使った学習活動への出席認定」が、昨年度調査から続けて大きく伸び、1万人以上の不登校の子ども達が、ICTを使った学習で出席扱いとなっています。これには、eboardのような映像授業、デジタルドリルツールの利用もありますが、学校の授業をまずはそのままでも、ライブ配信しているという学校を、よく聞くようになりました。

    出席扱いになるかは、学校長や教育委員会の判断になるため、「eboardで学習していれば、出席扱いになる」とは言えませんが、使っていただいているご家庭からのメッセージを紹介したいと思います。

    不登校になって一番の問題は孤立してしまう事やなかなか信頼できる人の繋がりが作りづらい事です。うちの場合はeboardのおかげで学びを諦めないで済んで、進学も本人の中で考えることが出来る様になってきて、本当にありがたかったです。

    dyslexia(読み書き障害)の息子は、現在は理解のある通常学級でiPadを使用しておりますが、以前の学校では理解が得られず不登校を選択していました。不登校の間「いーぼーど」があったおかげで「大丈夫」って自信を失わずにいれたとのことです。感謝の気持ちでいっぱいです。

    学校の定期テストを初めて受けて、理科で70点がとれました。学校からのフォローもない中で、独学での70点は本当に立派だと思い、これもひとえにeboardのおかげと感謝しています。テストを受ける気になったのも、eboardによって「学習が面白い」という実感が得られ、学習を積み重ねることができ、自信がついてきたからだと思います。

    一方で、自宅で一人で学習を始める/続けるのは、多くの子ども達にとって難しいものです。当然、人との関わりの中で学ぶことも大切で、教育現場におけるあらゆる学びを、オンラインの独学で代替することはできません。

    私たちNPO法人eboardは、学校でも、学校の外でも、人やコミュニティとつながり続けられることが 不可欠だと考えています。そうしたつながりを増やし、よりよいものにしていくための取り組みとして、不登校に関わる教育現場の方のための研修プログラム「eDojo(イー道場)」を スタート しています。

    不登校の数ばかりが注目されてしまいがちですが、不登校に至るまでの背景や、置かれた状況は本当にさまざまです。一人でも多くの方に知っていただきたいと、eboardに寄せられた声を集めました。ぜひ、多くの方に広げていただけますと幸いです。

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