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  • 「貧困の連鎖をなくしたい」寄付で思いを託すサポーターの声 eboardマンスリーサポーター 武藤晴彦さん

    まさに、身一つパソコン一台で活動をスタートしたeboard。多くの人に「無理だ」と言われながらも、活動を継続し、日本全国に学びを届けられるようになったのは、寄付を通じて活動を支えてくださる方がいたからでした。設立当初から9年間にわたって 寄付を続けていただいている武藤さんに、その思いをお伺いしました。

    • 武藤 晴彦さん

      DEP Japan株式会社 代表取締役社長

      武藤 晴彦さん

      複数の外資系企業での勤務のかたわら、教育・地域活動としてPTA会長、民生児童委員などを歴任。埼玉県越谷市で「越谷子育て応援フードパントリー越谷市場」の代表も務め、学習支援活動にも取り組んでいる。

    貧困の連鎖をなくしたい ー挫折した思いを「寄付」で託すー

    中村:いつも応援ありがとうございます。武藤さんには、創立期の頃からeboardの活動をマンスリーサポーター(月額寄付会員)として支えていただいていますが、eboardとの出会い、寄付いただいたきっかけって、何だったんですか?

    武藤:私は今は会社員をやっていますが、2010年に地元の小学校のPTA会長を務めたことがきっかけで、子どもを取り巻く現実をはじめて知りました。更に2011年3月に東日本大震災もあって、心機一転、2011年頃に脱サラして、オンライン学習塾を始めたんです。そのころ、日本eラーニングアワードの授賞式に参加して、そこで中村さんの話を聞いたのが最初だったと思いますね。

    ▲ NPO法人eboardは、2014年第11回の日本eラーニングアワードで「文部科学大臣賞」を受賞。法人化から1年ほどの時期でしたが、島根県での取り組みなど、その活動の社会的な成果に評価をいただきました。写真は、受賞イベントで発表する代表の中村。

    中村:その時に、すぐに寄付していただいたんですか?

    武藤:私にも、収入の格差から学習が遅れてしまうといった「貧困の連鎖」をなくしたいという思いがあって、低価格で個別指導ができるオンライン学習塾を始めたんです。けど実際には、低価格でも支払いのできない世帯がいることや、机へ向かったり、席に着いたり、学習以前の基本的な生活習慣が身についていないなど、始めてみると難しいところもありました。

    中村:今でこそ、オンライン会議や授業が普及しましたが、2014年ごろだと、まだまだでしたよね。

    武藤:そうですね。私の方はeboardとは違って、ビジネス、商売としてもしっかりやりたいという思いがあったんですが、やはり当時は、社会性と経済性のジレンマもあって、その後、塾は1年ほどでたたんでしまったんです。

    いわば、挫折してしまった自分への償いじゃないですけど、自分と同じ思いを持つ人を「寄付」で応援させてもらうことで、自分の事業や思いを継続していきたいと思いました。「学びをあきらめない」というミッションや、無償でやるというところに「ベースはまさに同じだな」と強く共感したんです。

    中村:ありがとうございます。改めてこうやっておうかがいすると、 本当に武藤さんの熱い思いを「寄付」という形で託してくださっているなと、身の引き締まる思いです。私も友人や知人の活動を応援させてもらうこともあるんですが、「課題に感じているけど、自分にはできないこと」に「寄付で思いを託す」ことで、一緒に社会をよくしていこうという思いで応援しています。

    地域に広がり始めた eboard

    中村:武藤さんは、寄付という形だけでなく、地域でのボランティア活動でも、ずっと子ども支援の活動をされてますよね。そことeboardのつながりって、あるんでしょうか?



    武藤:はい。地元の(埼玉県)越谷市で、フードパントリー(※)や学習支援を行っています。まさにeboardが必要になるような、学びが行き届いてない、貧困家庭の子の状況を日々目の当たりにしています。
    ※ フードパントリー:母子家庭等の生活困窮世帯(生活保護者は除く)に対して賞味期限が近い食品などを配付する活動のこと。

    塾に通えないご家庭も多くて、そんな時には、自信を持ってeboardを紹介しています。自分が寄付していると、遠慮なく紹介できる(笑)。ですが、GIGAスクール構想で1人1台端末が配られてからは、eboardそのものの認知度が上がってきているので、すでにご存じの方も多いですね。「eboard知ってる?」と聞くと、子どもたちから「学校でやってるやつ!」と返ってくる。保護者もeboardの存在を知っていたりします。ただし、使いこなせてない子がほとんどなので、具体的な操作方法や使い方のコツ、子どもの学力状況に応じた視聴動画の選定などもしています。

    こうした広がりを目の当たりにすると、中村さんがお会いした頃から言われていた子どもが「いつでも、どこでも学べる」、大人が「学びを支えられる」というのが、地域社会に実装されてきているなと感じますね。

    中村:いやぁ、武藤さんのように長年活動を見守ってもらっている方に そう言ってもらえると、とても嬉しいです。寄付という形での応援には、まだまだつながりづらいところもあるんですが、コロナやGIGAスクールを経て、10年前と比べると、本当に(eboardが)広がってきているなと感じています。

    武藤寄付については、日本の子どもが置かれている現状を、そもそも「分からない、知らない」という人が多いんじゃないかと思います。私自身は、PTA会長やオンライン塾、フードパントリーなどの経験があるので、 どこにでも貧困家庭があって、学びが行き届いてない子がいるということは、身をもって知っています。けど普通は、戦後の焼け野原ならいざ知らず、パッと見モノがあふれている時代に「7人に1人が相対的貧困家庭にある」ということは、なかなか理解されづらいですよね。

    eboardの活動が広がる中、マンスリーサポーターの代表という形でインタビューのお話をいただいたんですが、私としては、あまり寄付は増えていないというのは、悲しいですね。

    中村:広報活動など、私たちの頑張りが足りないところも大きいです。だからこそ、法人化して1年も経たない2014年から、マンスリーサポーターになっていただけたことは、本当にとても大きな力になりました。そうした思いに応えていくためにも、もっとたくさんの方に応援してもらえる団体にならなくては、と思っています。

    会って感じた「この人は本物だ、本気だ」

    中村:寄付に関連して、「寄付を始める理由」と「続ける理由」って、また違うところもあるのではと思います。武藤さんは、地域での活動でのご経験もあり、教育や子ども支援に関わる他のNPOもたくさんご存知かと思うのですが、その中でも、変わらずeboardを応援してもらっている理由って、どこにあるんでしょうか?

    武藤:そうですね。「学びをあきらめない」というのは、多くのNPOも考えることかもしれませんが、eboardは、それを徹底して具現化してきたからだと思います。小学校、中学校のすべての教科を網羅している。当たり前のことですが、途中でやめるわけにはいかないですよね。最初から、しっかりやりきることを決意してスタートしてるんだなと。そして決意したことをきちんと実現している。勝手ながら、本物だと感じて応援しています。


    ▲サプライズで「学びをあきらめない社会へ」ケーキをご用意いただいたことも。中村は涙。

    中村:ありがとうございます。こつこつと作ってきたものなので、そう言っていただけると本当に嬉しいです。

    武藤:そもそも中村さんも、eboardを立ち上げる前のサラリーマンを続けていれば、そこそこ以上の収入や生活が待っていたであろうところを、投げ打ってという感じですよね。なおかつ思いや情熱だけじゃなくて、きちんと「経営」されている。経営やミッションなんかも含めて、やっぱり「賢い人がきちんとした思いを持ってやると、こうなるんだな」っていうのは最初から思っていて。勝手ながら、この人は本物だ、本気だと最初から感じたところはあります。

    ボランティア活動なんかをしていると、自分を犠牲にしすぎて、悲壮感がただよっている人もたくさん見てきましたけど、中村さんはそうじゃない。直接お会いしても、 人柄というかね、今日の格好の通り飾らないというか、自然体というか、いい意味で清潔感があふれるというかね。

    中村:嬉しい反面、少しお恥ずかしいです。特に2014年頃なんて、かなり悲壮感が漂ってたんじゃないかと思いますね。お金も全く無かったですから(笑)

    武藤:最近だと、コロナ禍での「やさしい字幕」のように、少数派ではあるけれど必要な人にスポットライトを当てるところも「さすがだな」と思って見ていました。

    やさしい字幕とは:
    ろう・難聴の子、外国につながる子、学びの困りごとを抱えた子を主な対象に、学習のハードルが下がるよう編集された字幕です。eboardのすべての映像授業には、19の企業・団体、1,120名のボランティアの手により、「やさしい字幕」が付けられています。

    武藤:オンラインでボランティアを募集して、全ての動画に字幕を付けて...なかなか大変なプロジェクトだったと思うんですが、元々の信念、ミッションが根付いているというか、取り組みそのものに、やさしさや丁寧さを感じました。

    中村:ありがとうございます。あの取り組みは、コロナ禍で全国休校になった時、ろう学校の先生やろうの子本人から「字幕がついてる映像がなくて、勉強ができない」と問い合わせやメッセージをいただいたことがきっかけなんです。


    中村:私もその時に調べていて驚いたのですが、たくさんICT教材やオンライン教材があるにも関わらず、網羅的に映像授業に字幕のついたものは1つもなかったんですよ。要は、企業によるサービスでは儲からない、ということなんです。「誰もやらないんだったら、自分達がやろう」ということで、限られた体制の中、字幕をつけ始めたんですが、最終的に1,000名以の方にボランティアでご協力いただいて、約2,000本の映像授業すべてに「やさしい字幕」をつけることができました。eboardの規模からすると、本当にたくさんの方に応援していただけた取り組みでした。

    「学ぶことは生きること」 eboardを応援し続ける理由

    中村:もう少しお聞きしたいのですが、武藤さんから見た時に、eboardの活動の意義ってどんなところにあると思いますか?私たちの団体は、もちろんネットで家から使ってくれている子もいるんですが、直接支援の現場を持っているわけでもなくて、間接的な支援の役割も大きいんですよね。寄付をする立場だと、より直接的に、災害や紛争などであれば「今すぐなんとかしなくちゃ」「今すぐ届けてほしい」という思いがあると思うんです。武藤さんは、どう見てらっしゃるのかなと思って。

    武藤:うーん、そうですね。私もフードパントリーの活動をしていますから、毎日の食べ物があるということの重要性は、身に染みて分かっているつもりです。でもそれはあくまで「ベースライン」だと思うんですよね。こういう言い方が良いのか分からないけど、食べ物があるだけでは、真の意味で「人として生きてる」って言えるんだろうか?と思うんです。

    勉強しなくたって死にはしないと思う人はいるだろうし、実際、学べなくても死にはしないと思います。ただ私は、考えたりわかったりする楽しさや嬉しさを含めて、「学ぶことは生きること」だと考えていて。そんな学びを子どもたちに提供していることが、eboardの活動の意義じゃないかと思いますね。

    中村:いやぁ、嬉しいです。eboardへの寄付はそういうところにつながっていると。

    武藤:大げさに聞こえるかもしれませんが、eboardへの寄付は「日本の将来に投資する」というイメージ。現場で個別的な活動するものとは、違うものですね。ご存知のとおり、日本の経済が疲弊する中にあって、この国は子どもの教育にかける予算が、先進国の中でも非常に少ない。どんどん少子化も進んでいますね。

    子どもがいなくなったら、日本を支えられないのは当たり前ですが、その支える子もきちんと考えられる子じゃないとなって。個人的には、中村さんみたいな子がいっぱいになればいいなって(笑)。単に勉強ができるとか偏差値が高いとかじゃなくて、考える力、常識、人間力... そういう子がたくさん育って欲しい。だからこそ、私も学習支援の活動をしていますし、eboardを通して、これからの日本を支える子どもたちが学びをあきらめないよう、微力ながら応援をしています。

    何をしても変わらない…でも、eboardはあきらめてないんですよ

    中村:最後に、見てくださる中には、eboardを応援しようかな、寄付してみようかなと考えてくださる方もいるかと思うので、そんな方に向けてメッセージをいただけないでしょうか。

    武藤:よく「魚をあげるのではなくて、魚の釣り方を教えることが大事」という格言がありますよね。私もフードパントリーをやってますから、食べ物が無い人には、当然魚をあげるのがいいと思っています。それで食べ物がある状態になったら、次は魚の釣り方=学びを提供することが大事だと思ってます。一度身につければ、学びは財産になります。お金は使えば減っていくけど、学んだことは減らない。これはすごく大きいことだと思いますね。

    先ほども言いましたが、国家予算や国の政策を変えるのは、一個人では難しいです。多くの人が不満や不安を持ちながら、「何をしても変わらない」というあきらめ感を持ってるかもしれません。でも、eboardはあきらめていない、中村さんはあきらめていないですよ。そんな団体を支援することは、何かしらの形で間違いなく、結果が出ますし、この10年がそれを証明していると思います。

    100円でも500円でも1000円でも、日本の将来に投資ができる、貢献ができるっていうのは、非常に価値のあることだと思いますので、ぜひ、一緒にeboardを応援しましょう!

    中村:ありがとうございます。これからも応援、どうぞよろしくお願いします!

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